工事前 床は中央で10センチ近く下がっていた
今年の初め、松本城の北側に古くからある教会から、耐震補強と改修設計の相談を受けた。
それから1年弱、12月最初の日曜日にその完成式を迎えることができた。
教会はすばらしく魅力的な建築である。
松本城は観光の目玉であろうが、この教会も現代の松本の宝であることは間違いない。
木造でゴシックとロマネスクの折衷様式の教会は築105年が経ち、
戦後移築もされてかなりくたびれた様子だった。
3年前の松本地震をきっかけに耐震診断は行っていたが、工事のやり方や予算の問題を解決できず、
なかなか前に進まなかったようだ。
仕事柄、古い建物を前にすると『何とかしなくては!』と思うのはいつものことである。
古きよき建物を直す(治す)のは、地域密着で患者と向き合い治療する町医者のようなものだ。
とにかく光と清潔感を大切に、凜々しさを持って信者を守る建築であってほしいと願いながら、
設計に取り組んだ。
7月の終わり、工事が始まった。
途中途中で想定外の傷みに遭遇し、その都度解決をせまられたが、厳しいスケジュールの中、
施主である教会の方々と施工者の熱意で、何とかこの日を迎えることができた。
引渡し前日には早速結婚式も行われた。
完成式では、厳かな讃歌の歌声と共に、信者の方々の感謝と喜びに接することができた。
私もたくさんの思い出と安堵、そして一抹の寂しさ残して教会を後にした。
川上
結婚式
完成式典にて